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ある米国人夫婦の決断!
ある日の出来事です。
あるご夫婦がハワイから福島市においでになりました。ご夫婦とも日系3世の米国人です。
3世ですから、ほとんど日本語は話せません。通訳を交えての話となりました。
聞けばそのご夫妻は来年4月から、ここ福島に移り住むと言います。
今回、そのための下準備で、住む所を探したり、病院、役所、ショッピングセンター等の生活環境を確認するための来日でした。

仕事は第一線を退かれ、これから穏やかな余生を送れるのに、なぜあの温暖なハワイから、気候条件も厳しく、知り合いもいない福島に住もうとするのか?
理由を聞いて驚きました。
これからの自分の人生を福島の復興に役立てたいというのです。

ご主人は、東日本大震災の時、アメリカ陸軍基地「キャンプ座間」に勤務していたそうです。
地震直後に起こった原発事故では、混乱する日本政府をしり目に、米軍は直ちに調査を開始、被害状況、放射性物質の拡散状況を早期に把握しておりました。
やがてそのデータが日本政府に渡り、避難地域が限定され、パニック状況が収束されます。
彼も軍の一人として、一連の行動に加わっていたそうです。
彼が、今、最も気にしているのが、今なお続く福島への風評被害なのです。検査を受け、食物の安全性が担保されているのに、いまだに受け入れられない福島の農産物。いくら行政側が、生産者側が安全性を訴えても信じてくれない。
自分たちが外国から移り住み一市民として発信する声こそ、世界の人に届くのではないかと考えたのです。
ご主人は69歳とは見えないほど若々しく、熱く語ります。
隣の奥様は「あなたについていくだけ」と言いたげに優しい表情で黙って頷き、その話を聞いておりました。
これから悠々自適な生活が待っているのに、何が彼をそこまで駆り立てるのか?
軍人を経験した故の正義感なのか。日本への愛着なのか。
聞けば息子さんも「なぜ福島なのか」と強く反対したと言います。

このご夫妻と話をしていると、この原発事故からすでに7年余りの月日が流れ、福島に住む私達自身がすでにあきらめの感情を持ち、風化現象を起こしていることに気づきます。
私は、複雑な思いで聞いておりました。
そして尊敬、感謝、恐縮、驚き…様々な思いがこみ上げてきました。
福島では、英会話教室を開いて収入を得ながら、活動したいと仰っておりました。
ご夫婦の名はスティーブ寺田さん、ジャッキー寺田さんです。
近くなったらマスコミでも取り上げられると思います。
皆様、この決断を是非応援してくださいね!

梅津寿光